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#01
神田×開港
「神田ポートビル」プロジェクト開発秘話
KANDA PORT BLDG. PROJECT KANDA PORT BLDG. PROJECT
KANDA PORT BLDG. PROJECT KANDA PORT BLDG. PROJECT
サウナに学校、写真館。
下町の歴史あるビルをまちづくりの拠点へ。

オフィス街としてにぎわう神田錦町。もともとは東京大学や学習院大学の発祥の地であり、周辺には高校や大学・学術機関、出版社が集積する“学びのまち”。安田不動産は、この神田錦町にオフィスビルをはじめとした十数棟の建物を所有し、近年ではエリアリノベーションを推進。 “学びのまち”としての歴史を継承し、さらに発展させていくために、「アカデミックジャングル」※をまちづくりコンセプトに、地域と密着する魅力的なまちづくりを行っている。
2021年春、そんなアカデミックジャングルの拠点として、神田錦町に新しいビルが誕生。「神田のまちをもっと盛り上げたい!」1人の担当者の想いと情熱が、これまでになかった新しいまちづくりへ大きく一歩を踏み出す原動力となった。集まったパートナーは各業界の第一線で活躍するすごい顔ぶれ。異色の「知」が融合する一風変わったビルは、何を狙い、どんな経緯で建てられたのか?プロジェクトに関わったキーパーソン4人に聞いてみた。

※アカデミックジャングル・・・一流の知識人や職人、際立つ個性を持つ研究者や専門家など学びに貪欲な人たちが集まり、ジャングルの生態系のように共存・交雑する中から新しいことが生まれてくる場所をイメージしたコンセプト。

株式会社ほぼ日
代表取締役社長
糸井 重里 氏
コピーライター時代には、百貨店、アニメなど多岐にわたるジャンルで代表的な広告を制作、また、作詞や文筆、ゲーム制作などでも活躍する。
1998年に「ほぼ日刊イトイ新聞」を立ち上げ、現在は株式会社ほぼ日の代表として商品開発や、エッセイの執筆などさまざまな分野に活動領域を広げる。
神田ポートビルのネーミングを担当し、株式会社ほぼ日では、「ほぼ日の學校」の教室スタジオを本ビルの2・3階で運営。
株式会社ゆかい代表
池田 晶紀 氏
写真家。クリエイティブ・ディレクター。アーティストとして活動しつつ、サウナの普及にも精力的に活動。
一般社団法人フィンランドサウナクラブ会員になるほどのサウナ好き。
神田ポートビルのクリエイティブディレクションを担当し、1階に「あかるい写真館」、オルタナティブスペースをオープン。
株式会社ウェルビー
代表取締役
米田 行孝 氏
SAUNA FES JAPANなどのイベントを行うなど、新しいサウナのあり方を提案しつつ、日本サウナ・スパ協会の専務理事として、常に業界を牽引。
日本での本格的なサウナの普及活動に力を注ぐ、サウナ界で知らない者はいないゴッドファーザー。神田ポートビル地下1階にて、東京初進出の次世代サウナ施設「SaunaLab」を展開。
安田不動産株式会社
開発第一部第一課所属
芝田 拓馬
2014年入社。2016年に開発第一部に異動。2017年より神田ポートビルを担当し、今回のプロジェクトの企画、物件取得など計画当初から主担当として携わる。
[ SESSION 1 ]
目指すは、神田らしい文化と人が交わる新しい拠点。答えはサウナ?
印刷会社の旧社屋売却の相談を受け、どのように活用していけばよいか悩んでいた担当者の芝田。デザイン監修を担当いただいた
建築家の藤本さんと、ビルの全体コンセプトを模索する中で出てきたのは、「サウナ」というキーワード。
芝田:

プロジェクトの立ち上げ当初は、飲食店舗やオフィスが入るような、いわゆる一般的な不動産開発プランで進みかけていましたが、他のデベロッパーでもできるし、面白くない。もっとまちの特徴を活かして新しい価値を生み出す拠点にしたいと悩んでいたときに辿り着いたのが、「サウナ」というキーワード。藤本さんにサウナに詳しい写真家・池田さんを紹介いただき、会いにいきました。

池田さん:

初めてお会いした日に、芝田さんにはサウナの素晴らしさを熱く語ったのですが、言葉で伝えるには限界がある。まずは体験してみなよ!と勧めたんだよね。

芝田:

池田さんに手ほどきを受けて本格的なサウナを体験してみたら、想像以上の爽快感で驚いたんです。オフィスとサウナの融合が、新しいまちづくりにつながるのではないかと感じた瞬間でもありました。

池田さん:

本格的なサウナを一度体験すれば、みなさんサウナ最高って言います。言葉で説明しきれない圧倒的な魅力が、サウナにはあるんですよ。

芝田:

サウナの本場フィンランドでは、サウナがまちのコミュニティ形成における重要な役割を担っているという情報もありました。国内では、神田が銭湯の原型である「改良風呂」の発祥の地。サウナをこの神田に呼び込むことがまちづくりの第一歩となり、新しいコミュニティの創造につながるはず、と確信しました。

大変だったのは、社内を通すことでした。いくら説明しても「サウナ?なんで?」という声ばかり。私自身が体感して感動したように、サウナに入ってもらう以上の方法はないと思い、一人ひとり社員をサウナに誘って口説いていきました。サウナの虜を地道に増やしていったのですが、ただ、その中でも頑なに脱いでくれない上司がいたんです。

池田さん:

まさに難攻不落でしたね。しかもプロジェクト推進上の重要人物。

芝田:

そこでお力を借りたのが、サウナ業界のゴッドファーザー、株式会社ウェルビーの米田さんです。本格的なサウナであれば上司も体験したくなるのではないかと考え、池田さんと上司を含めたメンバー数人で、ウェルビーが運営する名古屋の「SaunaLab」を視察させてもらいました。

米田さん:

この視察の前から、芝田さんたちにはビルのコンセプトや、サウナを中心としたまちづくりの計画を説明してもらっていました。当時は、まだ自分が神田ポートビルにサウナを作るとは思っていなかったので、純粋に「サウナの魅力がもっと広がればいいな」ぐらいに考えていました。

サウナ好きに悪い人はいないのでご協力していましたが、上司の方と一緒に視察に来た際には、安田不動産の方々は本当に視察だけしてサウナには入らなかったんです。今だから言えますが、あのときは「あれだけ話をして、入んねぇのかよ!!」って思っていましたよ(笑)。サウナ好きとしては、なんとしてもサウナの魅力を体感してほしいと思い、全国のサウナ好きが集まる聖地、長野のフィンランドヴィレッジにお誘いしたんです。

芝田:

視察のとき、上司は仕事相手の前で服を脱ぐのを避けたかったらしいです。結局、上司が入らないので他のメンバーもサウナには入れませんでした。ですが、実は米田さんと別れた後、視察メンバー全員で名古屋にある別店舗のサウナに入りました。それ以降上司もサウナにハマったそうです。その後、上司も米田さんにサウナ好きをアピールしたかったようで、フィンランドヴィレッジでは、冬の凍った屋外の水風呂にまで飛び込んでいくというサプライズ。一同本当に驚きました。

池田さん:

びっくりしたな、あれは(笑)。サウナ好きでも凍った水風呂に入る人なんていないんじゃないかな。でも入ってくれてよかったなぁって、ホッとしたよね。

芝田:

本当ですよね。ここまでサウナにハマってくれるとは思いませんでしたが、魅力が伝わって嬉しかったです。

米田さん:

実は、当初サウナは池田さんが運営するという話でした。運営方法について教えていたのですが、池田さんの本業は写真家。いくらサウナが好きでも簡単ではないことを説明すると「じゃあ、米田さんやってよ」とお願いされたんです。「そう来るか」と思いましたが、サウナが神田に活力をあたえる拠点になればとプロジェクトに参加することにしました。ぼくが進めているサウナの事業は、単なる営利目的ではなくて、ある意味社会運動と捉えています。ぼくのミッションは「昔からあるサウナというものを、いかに現代にフィットさせてその魅力を伝えるか」。このプロジェクトなら、その一端を担えると思いました。それでも、一番の後押しになったのは、芝田さんたちのプロジェクトへの情熱。ぼく自身もこのメンバーと、神田の未来を見てみたいと火がついたんですよ。

神田ポートビルロゴ
複数の看板の集合体で船のシルエットのロゴを作成。さまざまな人が行き交う“港”であることと、多様なテナントの複合施設であることを表現しています。また、「神田」のフォントはビルの旧所有者で現在4~6階に入居中の株式会社精興社が作成した「精興社書体」を使用しています。
[ SESSION 2 ]
学校で学び、サウナで休む、
アカデミックジャングル。
米田さんの協力もあり、地下にサウナが入ることが決定した。しかし、サウナと通常のオフィスの組み合わせで、果たして本当に学びに積極的な人たちが集まる拠点といえるのか。最後のピースである糸井さんとの出会いで、プロジェクトは加速する。
糸井さん:

ぼくがこのプロジェクトに関わることになったのは、池田さんから「美味しいピザ屋を見つけたので一緒に行きませんか?」と誘われたのがはじまりで。神田ポートビルについては、何も聞いていませんでした。ピザ屋につくと、なにやら難しい顔ですでに打ち合わせが始まっていて、端から見ていてすごくじれったかった。空気も重いし、なんだか落ち込んでたよね。

芝田:

落ち込んではないです(笑)。米田さんのサポートもいただき、テナントとしてサウナは入ることになったのですが、もともとコンセプトとして掲げていた「アカデミックジャングル」のアカデミックな要素をどう打ち出していくか、壁にぶつかっていました。

糸井さん:

話を聞いていて、なにかが足りない気がしたんです。メンバーも揃っている。サウナというキーワードもいい。神田という場所もすごく注目を引く。どうしたらいいんだろうと他人事のように考えながら帰っていたら、ふと「自分がプロジェクトに参加したらいいんじゃないか」と思ったんです。そうすれば、それぞれのピースがうまく噛み合うんじゃないかと。

池田さん:

それで、実際に現場を見にきてくれたんですよね。

糸井さん:

そうそう。神田の景色に目をやると、皇居や日本武道館、秋葉原、御茶ノ水に東京ドームなど、向きを変えれば全部違う景色が見えるんです。もともと神田にはいろいろな魅力があることは知っていたけれども、改めて面白い立地だと感じた。そのころには、深夜に車で神田まで行くようになっていて、もう神田が好きになっていました。そしてなにより、一緒に取り組むメンバーがよかった。このキャスティングは、芝田さんの手腕ですね。

芝田:

糸井さんにはまちづくりコンセプトに共感いただき、社長はじめ役員に学校とサウナの可能性についてプレゼンまでしていただきました。私の力だけではここまで絶対に来られませんでした。「ほぼ日の學校」に入っていただいたおかげで、「アカデミックジャングルの拠点」とするための最後のピースがはまった気がしました。

糸井さん:

短期的な利益だけを目的にする事業だったら、むしろぼくらは入らない方がよかった。でも、安田不動産は中長期目線で土地全体の価値を上げていくという考え方でしたし、なにより、自分たちがくることで神田が面白くなる、その未来を味わいたかったんです。

このプロジェクトを改めて振り返ってみると、本当に一人ひとりの熱意から始まっていますが、最初のきっかけは、安田不動産ですよね。みんなの気持ちを吸い上げて、つくり上げていく仕事ってとてもいいですね。不動産の仕事っていいなと思ったもん。

池田さん:

「ほぼ日の學校」という頭を使うアカデミックな場所が、“学びのまち”神田の歴史を汲み取りつつ、新しい「知」を世界に発信していく。一方で、サウナが心や身体、頭を休めて、あえて考えない時間をつくる。それを糸井さんは、「意味からの解放」と言ってくれて、一気に視界が開けた気がしたんです。

[ SESSION 3 ]
近い未来、神田はもっと
価値が生まれるまちになる。
糸井さん:

この神田の土地で、地元の人が喜ぶことと、世界へ発信することを両輪でやっていきたいと思っています。学校もサウナも、もともと人が集まる場所であり、神田は文化的に広がりのある場所。ここを中心にして人が集まることによって、いままでなかった発想や考えが生まれる。生まれたものを、より広い世界に発信できたら、神田はもっと面白いまちになると思います。

個人的には、神田の空いている物件が、トキワ荘みたいになったら面白いですね。せっかく出版社が多く集まっている場所だし、漫画やアニメ、サブカルで力を発揮したい人がみんな神田に住むようになる未来。「新しい価値が生まれてくるまち、神田」のようなエリアになれば、神田の地で本当の知の創造ができる気がします。

芝田:

そのアイデアはいいですね!私たちとしても、この神田ポートビル単体で利益を出すのではなく、このビルをきっかけにまち全体が潤い、将来的に安田不動産にもリターンがあるという考え方をしています。トキワ荘のような構想を実現できる仕組みを考えて形にするのが、私たちの仕事。自分が面白いと思うことをどんどん生み出していきたいですね。

池田さん:

ぼくは、神田の人やまちをおもしろくかき混ぜたいなと思っています。一時の流行りで終わってしまうような観光地化を目指すのではなく、神田というまちに、新たな習慣を生み出していきたい。そのためにまずは地元の人に長く愛されながら、外部の人との交わりも上手につくっていく、いいさじ加減を見つけていきたいです。このプロジェクトが次のまちづくりの見本になるように、みんなで一緒につくっていく感覚で、神田全体を盛り上げていければ嬉しいです。

米田さん:

ぼくはプロジェクトに関わりながらも、引き続きサウナの普及に力を入れていきたいですね。
神田ポートビルが東京進出の第一号店なのですが、これまで出会えなかった人や触れられなかった層にもサウナの素晴らしさを知ってもらうチャンスだと思っています。

芝田:

これだけの方々が集って、神田を盛り上げていこうと言ってくださるのはとても心強いです。神田ポートビルも完成して、人が交わる拠点の運営が開始されます。このビルで交わる人と人、学びの交流をきっかけに神田に住む方々とこのエリア全体も盛り上げていくことができれば、これ以上のことはないと思います。

プロジェクト計画資料
ビルのデザインは【NATURE×AUTHENTIC】をテーマに、人々を寛容 に迎える 1 本の大樹をイメージした意匠。アースカラーと左官の素材感を大事にし、新しいながらも歴史も感じられる、周辺の街並みと調和する外装としています。
プロジェクト担当 芝田の対談後記
対談の場でプロジェクトのみなさんとお話しすると、並々ならぬ情熱と冒険心を持っているすごい方々と組ませてもらったんだなと実感します。“神田のまち”を今以上に魅力的にしたいという気持ちはありましたが、今日のお三方をはじめ、関係者の方々のご協力と神田への想いがなければ、この神田ポートビルは完成しなかったと思います。このビルは名前のとおり、これから港となってあらゆる人が行き交う場所にしたいと思っています。ここに集う人には、学びや人との交流など何かを得て帰ってほしいですね。今後も自分が考えうる限りの頭と足を使って、アイデアを考え、かたちにしていくことに挑戦し続けたいと考えています。